2003年11月1日 | |||||||||
(各)党 御中 | |||||||||
財団法人 いしずえ
(サリドマイド福祉センター) 理事長 中川久嗣 〒153-0063東京都目黒区目黒1-9-19 TEL 03-5437-5491 FAX 03-5437-5492 http://www02.so-net.ne.jp/~ishizue/ |
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新たなサリドマイド被害の防止策に関する公開質問状 | |||||||||
私どもの財団は、戦後薬害の原点と言われ、日本で約千名、世界で数千名もの胎児が被害にあったサリドマイド禍の被害者が運営するサリドマイド福祉センターです。サリドマイド訴訟の結果、国と製薬会社が責任を認めた和解により設立され、被害者の福祉に関する事業、薬害防止に関する事業などを行っています。 | |||||||||
質問の主旨 | |||||||||
1950-60年代に多数の胎児の命を奪い障害をあたえた悲惨な薬害の原因となったサリドマイドの使用が、ここ数年世界的に復活してきています。日本でもおもに多発性骨髄腫などの治療のために個人輸入という形で海外から大量に輸入され使用されています(H13年度15万錠、H14年度44万錠)。 しかし、この薬は日本では未承認薬として扱われ、その管理や使用についての規制が全くありません。 われわれは、何の規制もない状態でこのままサリドマイドの使用が拡大すれば日本で新たな被害が起きる可能性が高いと考え、国が積極的な被害防止策を早急に講ずるよう厚生労働省に要望しています。 つきましては、この問題に関する下記質問項目について、貴政党のご見解をお示しいただきたくお願いいたします。 なお、ご多忙中まことに恐縮ではありますが、ご回答は11月6日までにお願いいたします。ご回答は当財団のホームページに掲載させていただくとともに、プレスリリースも予定しておりますのでよろしくお願い申し上げます。 |
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質問事項 | |||||||||
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※ご回答はなるべくE-mail ishizue@qa2.so-net.ne.jpをご利用ください。 | |||||||||
質問の背景および理由 | |||||||||
サリドマイドは、1950年代末にドイツで開発された鎮静・催眠薬で、日本では胃腸薬にも配合されて販売されました。 しかし、胎児に障害を起こす副作用(催奇形性)により、妊娠初期にこの薬を服用した母親から、上肢、下肢、聴覚などに障害をもった子供が多数生まれたのです。また死産や流産となって命を奪われた子供たちも数多くいました。 1961年11月に出された学者(レンツ博士)の警告により、サリドマイドは世界的に販売が停止され市場から回収されました。しかし、日本では厚生省の不作為により何らの対策も取られず、企業が自主的に販売停止したのはそれから10ヶ月後の62年9月でした。その間、国民には何の情報も知らされず、被害児の数が倍増しました。 このようなわが国行政の対策の遅れは、安全性への疑問からサリドマイドを承認しなかった米国食品医薬品局(FDA)の対応とは対照的です。 この問題について、被害が起きた当時は国と製薬企業が因果関係と責任を認めなかったため、被害者とその親たちは困難な生活のなかで訴訟を提起し、10年に及ぶ裁判が行われました。その結果、1974年に国と製薬企業が因果関係と責任を認める和解が成立しました。 この和解確認書において、厚生大臣は、「本確認書成立にともない、国民の健康を積極的に増進し、心身障害者の福祉向上に尽力する基本的使命と任務を改めて自覚し、今後、新医薬品承認の厳格化、副作用情報システム、医薬品の宣伝広告の監視など、医薬品安全性強化の実効をあげるとともに、国民の健康保持のため必要な場合、承認許可の取消、販売の中止、市場からの回収等の措置をすみやかに講じ、サリドマイド事件にみられるごとき悲惨な薬害が再び生じないよう最善の努力をすることを確約」しました。 そして、わが国では、サリドマイドは1971年、承認整理の形で承認が取り消され現在に至っています。 しかし、このサリドマイド事件以後、海外でサリドマイドの新たな薬効が研究されるようになり、とくにハンセン病の治療薬としてブラジルなどの国でサリドマイドが再び使用されるようになりました。 さらにその後、この薬が皮膚疾患やエイズ、がんなどに対して有効性が示唆されたとの研究報告が出されるようになり、欧米を含む多くの国でサリドマイドの臨床使用が試験的になされるようになりました。 しかし、ブラジルではサリドマイド使用の安全対策および危険性に関する情報提供が不十分なこともあり、100名以上の新たな被害児が生まれたと報道されています。 一方、1998年、米国FDAはサリドマイドをハンセン病を適応症として承認しましたが、その販売、使用および管理については厳しい制限を課し、販売元のCelgene社により、System for Thalidomide Education and Prescribing Safety(STEPS、サリドマイド教育と安全な処方のためのシステム)が構築されています(その後5年が経過していますが、米国では新たな被害の発生は報告されていません)。 こうした経過のなか、ここ数年わが国でも、サリドマイドが医師の個人輸入という形で海外から輸入され、多発性骨髄腫の患者さん等に使用されようになりました。その輸入量は平成13年度は15万6600錠、平成14年度44万454錠と急激に増加しています。最近、テレビや雑誌でサリドマイドが「がんに効く」という取り扱いで紹介されていることを考えると、今後その使用はますます増加すると思われます。 一般に未承認薬は、薬事法により業としての輸入、製造、販売、譲渡が禁じられていますが、海外で有効性と安全性が確認されている医薬品であれば、薬監証明を付すことにより個人輸入が認められています。 しかし、未承認薬の管理や使用については輸入した個人の責任とされているだけで、薬事法上何の規制もなされていません。 最近は、効果とともに副作用の強い医薬品が個人輸入の形で大量に輸入される傾向にあり、薬事法の実質的な空洞化が懸念される状況にあります。 現在サリドマイドは未承認薬として(おもに医師による)個人輸入が認められていますが、他の未承認薬と同様に、その管理や使用について何の規制もないままに使用されています。あるテレビ番組では、病院でサリドマイド剤を入院患者に容器ごと渡している様子が放映されました。現状は、この薬が厳格な管理の下で使用されているとはとても考えられません。 こうした実態がこのまま放置され続ければ、いずれ日本国内で新たなサリドマイド被害児が生まれる可能性を否定できず、サリドマイド訴訟の和解により設立された当財団法人としては看過できない状況にあると憂慮しています。 そこで、当財団法人は、厚生労働省が国民の生命と健康を守る責務があることに鑑み、サリドマイド被害の再発防止のための検討に至急着手するよう、要望書を2度にわたり厚生労働大臣に提出しました。 その結果、サリドマイドの使用実態を調査することを主な目的とした厚生労働省の研究班が昨年末に設置され、本年9月にこの研究班による「未承認薬の個人輸入による使用実態及び適正使用のあり方に関する調査研究」報告書が公表されました。そこには、サリドマイドの使用実態把握のため実施した病院・医師へのアンケート調査の結果が示されています。 それによると、サリドマイドの使用経験がある医師126人のうち、女性患者の妊娠の有無を確認していない医師が11人(8.7%)おり、サリドマイド剤を医師個人の机やロッカーに保管しているとの回答が35人(28%)もありました。また飲み残し薬の回収を全員からしているのは44%にとどまっています。 この結果は、サリドマイドの使用に対する注意が必ずしも徹底されておらず、また薬剤の管理を病院として責任をもって行っていないところが少なくないことを示しています。 厚生労働省は、この報告書を受けてサリドマイドの使用に関するガイドラインの策定をある学会に依頼したと聞いています。しかし、このガイドラインは恐らく拘束力のないものになる可能性が高く、また今のところ同省にはそれ以上の積極的な対策を講ずる予定はないようです。 当財団法人としては、各政党に対し、新たな被害者が生まれてからでは何にもならないことを肝に銘じ、1人の被害者も出さないために何をすべきかを考えていただきたいと強く念願しています。日本で新たな被害が出ればそれは広く海外でも報道され、国際社会における日本への評価にも影響を与えると考えます。 以上の経緯をご理解いただき、なにとぞ冒頭の質問事項にご回答いただきたく、よろしくお願い申し上げます。 |
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*添付資料
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2003/11/06 |