復活の経緯
サリドマイドを許可へ 米FDA
朝日新聞 1997.09.07朝刊
[ワシントン5日=辻篤子]米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は5日、厳しい制限つきながら、ハンセン病に伴う炎症の治療薬としてサリドマイドを許可するよう求める勧告を採択した。FDAは、この勧告に従い近く許可するとみられる。サリドマイドは1950年代、妊娠初期に鎮静剤や睡眠剤として服用した母親から障害児が生まれ、60年代初めに世界的に禁止された。
諮問委は勧告の採択に先立って公聴会を開き、専門家や市民から意見を聞いた。
許可を申請したセルジーン社は、ハンセン病患者の90%以上に効果があったと報告。
カナダから患者団体を代表して参加した車いすの男性は「サリドマイドのある世界を決して認めることはできない」としながらも、「この薬で楽になる人がいるなら、リスクは承知で選択の機会は与えられるべきだ」とFDAの姿勢に理解を示した。
ハンセン病などにみられる結節性紅斑(こうはん)と呼ばれる炎症は患者に大きな苦痛を与え、その治療薬としてサリドマイドが使われている例がブラジルなど一部の国にある。
しかし、不注意から妊婦が服用するケースもあるといい、公聴会でも、薬の評価に当たる責任者が「もし許可されたら、これまでで最も厳しい制限が課される薬になる」とのべた。
参考資料:木田盈四郎著「先天異常の医学」中公新書1982初版1997年12版の第6章P136-P162 に纏めている。
「サリドマイドの再登場」について
1997.10.15 いしずえ顧問 木田盈四郎
この記事を読んで、わが国でのサリドマイド事件には「役人」はいたが「政府の顔」が見えなかったことを思いだした。今から33年前に妊婦の投薬が胎児に奇形(胎芽病)を起こしたとき、政府は事の重大さに気づかなかった。そして、薬の発売、西ドイツでの販売中止、それから10ケ月後の製薬会社の回収決定、被害者の告訴の被告の立場、裁判の過程など、12年後に和解によって因果関係を認めるまでのすべて、厚生省は製薬会社の陰に隠れ、国民の生命を預かる責任者としての顔(態度)は見せなかった。
さらに、確認書で厚生大臣が約束した、薬(化学物質)による健康被害の調査研究と対策、先天異常の疫学調査、啓蒙の3点を今でも守っていない。また、医師にサリドマイド胎芽病、四肢欠損症、遺伝医学など、国民の健康を守るために必要な知識を教えていない。こうして、わが国の政府はサリドマイド剤の再登場を想定せず「ヒトの生命についての無知」を露呈している。
このニュースから、政府は先天奇形の多発は(地震と似ていて)「忘れた頃にやって来る」ことを、肝に命じて欲しい。これから、政府が何をし、何をしないか国民は見守っている。